腰痛は日本人が抱える最も一般的な身体的不調のひとつです。厚生労働省の調査によると、男女ともに自覚症状として最も多く挙げられており、日常生活や仕事に支障をきたすケースも少なくありません。腰痛と一口に言っても、その原因や症状は多様であり、それぞれに適した対処法が存在します。本コラムでは、腰痛の種類・主な原因・自宅でできるセルフケア・受診の目安について解説します。
腰痛の種類:急性腰痛と慢性腰痛
腰痛はその発症の経緯や持続期間によって大きく2種類に分けられます。
急性腰痛(ぎっくり腰など)
急性腰痛は、重いものを持ち上げたとき・急に体をひねったときなど、特定の動作をきっかけに突然発症する腰痛です。「ぎっくり腰」として知られる腰椎捻挫がその代表例です。痛みが強く、動くことが困難になるケースもあります。多くの場合、安静と適切な処置により数日〜数週間で症状が改善することがありますが、症状が強い場合や改善しない場合は医療機関への受診をお勧めします。
慢性腰痛
慢性腰痛は、3か月以上にわたって腰に痛みや不快感が続く状態を指します。デスクワークや長時間の立ち仕事、姿勢の悪さなどが積み重なって生じることが多く、椎間板や筋肉・神経など様々な組織が関わっていることがあります。慢性腰痛の場合、痛み自体が変化した神経の状態に由来している場合もあり、専門的な評価が重要です。
腰痛の主な原因
腰痛の原因は多岐にわたります。以下に代表的なものを紹介します。
腰椎椎間板ヘルニア
椎間板とは、脊椎(背骨)の椎骨と椎骨の間にあるクッションの役割を果たす組織です。椎間板ヘルニアは、この椎間板の内部(髄核)が外側に飛び出し、周囲の神経を圧迫することで痛みや痺れが生じる状態です。腰だけでなく、臀部から下肢(太もも・ふくらはぎ・足先)にかけて痺れや痛みが放散することがあります(坐骨神経痛様症状)。20〜40代の比較的若い年齢層にも多く見られます。
筋肉疲労・筋筋膜性腰痛
腰周囲の筋肉や筋膜(筋肉を包む膜)への過度な負担や疲労が原因となる腰痛です。長時間同じ姿勢を保つことや、急激な運動・重い荷物の持ち運びなどによって筋肉が損傷・緊張し、痛みが生じます。腰痛全体の中で最も多い原因のひとつとされており、適切な休息・ストレッチ・姿勢改善が症状の緩和に役立つ場合があります。
脊柱管狭窄症
脊柱管とは、脊椎の中を通る神経(脊髄・馬尾神経)が通る管状のスペースです。加齢などによってこの管が狭くなり、神経が圧迫されることで腰痛・下肢の痺れ・歩行困難などが生じるのが脊柱管狭窄症です。特徴的な症状として「間欠性跛行(歩くと痛みや痺れが増し、しばらく休むと和らぐ)」が挙げられます。50代以降に多く見られ、加齢変化が主な要因のひとつです。
腰痛の原因は外見からは判断が難しく、X線(レントゲン)・MRI・CT検査などの画像診断を組み合わせた専門的な評価が重要です。自己判断での対処には限界があるため、痛みが続く場合は整形外科への受診をご検討ください。
自宅でできるセルフケア
症状が軽度の場合や、受診後に医師から許可を得た場合には、自宅でのセルフケアが症状の緩和に役立つ場合があります。以下の方法は一般的なセルフケアの例ですが、痛みが強い場合や症状が悪化する場合は中止してください。
腰まわりのストレッチ
筋肉の緊張を和らげるストレッチは、慢性的な腰痛の緩和に役立つ場合があります。以下は比較的安全とされるストレッチの例です。
- 膝抱えストレッチ:仰向けに寝た状態で両膝を胸の方へゆっくり引き寄せ、10〜20秒程度保持します。腰の筋肉のストレッチに役立つ場合があります。
- 骨盤後傾運動:仰向けに寝て膝を立て、腰を床に押しつけるように骨盤を後ろに傾けます。5秒間保持し、5〜10回繰り返します。
- キャット&カウ(猫背・反り腰体操):四つん這いの姿勢で、背中を丸める(猫背)・反らす(牛)を交互にゆっくり繰り返します。
ストレッチ中に痛みが増す場合はすぐに中止し、医師や理学療法士にご相談ください。
姿勢の改善
腰痛の多くは、長時間の不良姿勢が原因のひとつになっています。以下の点を意識することが、腰への負担を減らすうえで役立つ場合があります。
- 椅子に深く腰掛け、背中を背もたれに軽くつける
- モニターの高さを目線と同じか少し低い位置に設定する
- 長時間のデスクワークでは、1時間に1回程度立ち上がり、軽く体を動かす
- 立ち仕事の際は、片足を少し高い台に乗せると腰への負担を分散できることがあります
- 重い荷物を持つ際は、膝を曲げて物に近づき、体全体を使って持ち上げる
温熱療法・冷却療法
急性期(受傷直後)の腰痛には、患部を冷やすことが炎症の抑制に役立つ場合があります。慢性腰痛では温めることで血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果が期待できる場合があります。ただし、どちらの処置が適切かは症状や状態によって異なりますので、判断に迷う場合は医師にご相談ください。
- 安静にしすぎることも腰痛の回復を遅らせる場合があります。症状に応じた適度な活動が大切です。
- 市販の湿布薬は症状の緩和に役立つ場合がありますが、痛みの根本的な原因を治療するものではありません。
- コルセット(腰部サポーター)は短期間の使用は有効な場合がありますが、長期間の使用は筋力低下を招く場合があります。
こんな症状は早めに受診を
腰痛の中には、早期の医療機関への受診が重要な症状が含まれている場合があります。以下に該当する場合は、速やかに整形外科または救急医療機関への受診をご検討ください。
- 排尿・排便の障害(尿が出ない・漏れる・残尿感が強いなど)が伴う場合
- 下肢(足・太もも・ふくらはぎ)に強い痺れや麻痺がある場合
- 安静にしていても痛みが強く、夜間にも痛みで目が覚める場合
- 発熱を伴う腰痛
- 外傷(転倒・事故など)の後に生じた激しい腰痛
- 2〜4週間以上、安静にしても改善しない腰痛
- 体重の著しい減少を伴う腰痛
新宿東整形外科での腰痛診療の流れ
新宿東整形外科では、腰痛の原因を丁寧に把握したうえで、患者さん一人ひとりの状態に応じた診療を行っています。
問診・視診・触診
いつから・どのような状況で痛みが始まったか・どのような動作で痛みが増減するか・日常生活への影響などについて詳しくお聞きします。また、姿勢の確認や触診によって筋肉の緊張・圧痛の部位などを確認します。
画像検査(X線・必要に応じてMRI)
院内のデジタルX線装置で骨の状態を確認します。骨折・変形・椎間板の状態などを評価し、必要に応じて近隣の医療機関へのMRI検査をご紹介する場合があります。
診断・治療方針の説明
画像結果と診察所見をもとに、現状の状態と治療の方針についてわかりやすくご説明します。薬物療法・リハビリテーション・生活指導など、患者さんの状況に応じた対応をご提案します。
リハビリテーション
新宿東整形外科にはリハビリテーション科が併設されており、理学療法士による運動療法・物理療法(温熱・電気刺激治療など)を受けていただくことができます。慢性腰痛の改善・再発予防のための運動指導も行っています。