「肩が痛くて腕が上がらない」「夜中に肩の痛みで目が覚める」――このような症状は、いわゆる「五十肩」(肩関節周囲炎)の可能性があります。五十肩は中年以降に多くみられ、「そのうち治る」と放置される方も少なくありませんが、適切な治療を受けないと関節の可動域制限が長引く場合があります。本記事では、五十肩の基本知識と治療の選択肢についてご説明します。
五十肩と肩こりの違い
「五十肩」と「肩こり」は混同されやすいですが、性質が異なります。適切な治療を受けるためにも、違いを把握しておきましょう。
肩こりとは
肩こりは、主に首・肩・背中の筋肉の緊張や血流障害によって生じる症状です。長時間のデスクワークや不良姿勢、ストレスなどが原因となります。痛みよりもだるさ・重さ・張りとして感じることが多く、肩関節の動き自体は制限されない場合がほとんどです。
五十肩(肩関節周囲炎)とは
五十肩は、肩関節(肩甲上腕関節)周囲の組織(関節包・腱・滑液包など)に炎症が生じ、痛みと可動域の制限が起こる状態を指します。「腕を横や前に上げると痛い」「後ろに回せない」「夜間痛で眠れない」などの症状が特徴的です。肩こりとの大きな違いは、関節の動き(可動域)が制限される点です。
病期(急性期・慢性期・回復期)の特徴
五十肩は一般的に3つの時期(病期)を経て経過するとされています。それぞれの時期で症状の特徴が異なり、治療・対応方針も変わります。
急性期(発症〜数週間)
炎症が最も強い時期です。安静時でも肩に痛みがあり、夜間痛(夜中に痛みで目が覚める)が起こりやすい特徴があります。動かすと強い痛みが出るため、無理に動かそうとしないことが大切です。この時期は関節を休めながら、痛みのコントロールが治療の中心となります。
慢性期(数週間〜数か月)
安静時の痛みや夜間痛は軽減してきますが、関節の動きが硬くなる「拘縮(こうしゅく)」が顕著になる時期です。腕を上げる・後ろに回すなどの動作が制限され、日常生活(着替え・洗髪など)に支障をきたすことがあります。この時期からリハビリテーションによる可動域の改善を図ることが重要とされています。
回復期(数か月〜1〜2年)
痛みが徐々に軽減し、可動域も回復に向かう時期です。ただし、治療を行わないまま放置した場合、可動域の制限が残り、完全に元の動きが戻らないケースもあります。適切なリハビリを継続することで、回復を促すことが期待されます。
原因と好発年齢
主な原因
五十肩の明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、加齢に伴う肩関節周囲組織(腱板・関節包・滑液包など)の変性・微小損傷が関係していると考えられています。肩の使いすぎや血流の低下、糖尿病などの全身疾患が関連するとも言われています。
好発年齢
40〜60代に最も多くみられますが、70代以降でも発症することがあります。「五十肩」という名前は好発年齢に由来していますが、若い年代でも起こることがあります。左右どちらの肩にも生じる可能性があり、稀に両側で起こることもあります。
受診時の検査・診断方法
五十肩と似た症状を起こす疾患には、腱板断裂・石灰沈着性腱炎・頸椎由来の肩の痛みなどがあります。適切な治療のためには正確な診断が重要です。
問診・身体診察
症状の経過・痛みの性質・どの動作で痛むか・夜間痛の有無などを詳しく確認します。可動域のテストや、特定の動きで痛みを再現する身体テストを行います。
画像検査
- X線(レントゲン):骨折・石灰沈着・変形性関節症などを確認します。
- MRI:腱板(肩の深部にある腱のグループ)の状態を詳しく評価し、腱板断裂との鑑別に役立ちます。
- 超音波(エコー):腱板や滑液包の状態をリアルタイムで観察できます。
治療の選択肢と日常生活での注意点
薬物療法
痛みの緩和を目的に、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服や湿布が使用されることがあります。急性期の強い痛みには、短期間のステロイド薬が処方される場合もあります。
関節内注射・ステロイド注射
肩関節内または肩峰下滑液包へのステロイド注射・ヒアルロン酸注射が行われることがあります。炎症を抑え、痛みを和らげる効果が期待されます。急性期の強い痛みのコントロールに役立つ場合があります。
リハビリテーション
慢性期以降に、理学療法士による肩関節の可動域訓練・ストレッチ・筋力訓練などが行われます。自宅でのホームエクササイズの指導も受けることができます。適切な運動療法を続けることが、拘縮の改善や再発防止に役立つとされています。
日常生活での注意点
- 急性期は無理に動かさない:痛みが強い時期は、むりやり腕を上げたりする「やみくもな運動」は逆効果になることがあります。
- 温めると楽になる場合も:慢性期には温熱療法(入浴・カイロ)で血行を促進させると痛みが和らぐ場合があります。
- 就寝時の姿勢:痛い側を下にして寝ると痛みが強くなりやすいため、枕やクッションを活用して楽な体位を探してみてください。
- 自己判断での放置は避ける:「そのうち治る」と長期間放置すると、可動域制限が固定してしまう場合があります。痛みが2週間以上続く場合は受診をお勧めします。
新宿東整形外科では、肩の痛みや動きの制限についての診察・検査・リハビリテーションを行っております。「五十肩かな?」と感じた方は、お早めにご相談ください。